KOHSUKE TODA
霞羽織/霞袴/霞筒袖
2024|本着物 綿、麻
2024年に発表したKOHSUKE TODAの本着物は、衿を加え生地に質感と色彩のあるものを採用したことが特徴です。
2023年では最小限であることを是とし、衿はなく色彩もモノクロでしたが、シンプルにすることは必ずしもいいことではないと感じ、装飾の価値を見直した上で思案を重ねました。
世界の流れとしては、反権力としてのカジュアル化が進んでいるように思います。企業のトップがTシャツ1枚で公の場に現れたり、仕事着がスーツから普段着に置き換わったりしている場面からも明らかですが、堅いイメージの場にあえてカジュアルな衣服を着ていくことで、前時代の印象を持つ古い権力者に対しての反骨心が見て取れます。
それは例えるならトランプの大富豪で革命を起こしているような印象に類似していて、カジュアルで現れることに特別感と強さも付随しているように思えます。
とはいえ、私の価値観と改めて照らし合わせてみると、カジュアル化には見極めなければならない一線があると感じました。
近年私は「風土と歴史」を思考の源泉と据え、美意識や価値観といった土着の文化や精神性を体現した作品を手掛けてきた訳ですが、要素を削ぎ落とす程に理想とは遠ざかっているように思えたことがきっかけです。
着物を広める活動としては「古典のままの着物(和服)を広める」または「ファッション(洋服)の文脈に和風を取り入れる」事例が多いように思います。
前者は文明開化前後の着物を見本として、それらを伝統として最も重んじています。和服や和菓子、和傘、和家具など、洋物に対するレトロニムとして和を冠した言葉が生まれた時代ですので、その時代に育まれた、誰もが日本的な美しさを感じる着物を広めています。しかしながら、和とはこうだと定義づけてしまったが故に変われない衣服となってしまっていることも事実であり、今日おいては多くの人々にとって毎日着れる衣服ではありません。それでは伝統は伝統のままのように思います。
後者はファッションの中に和風を取り入れるというスタンスです。着物の生地や柄などを洋服に取り入れることで、今の人々にとっても着やすい衣服となっています。しかし、あくまでも洋服ですので中心はパリやミラノにあり、この土地の伝統を繋いでいるとは言い難く、正装としては着にくいようにも思います。
では何を目指すのか。
私は「着物本来の在り方を体現する」ことを目指しています。
本来着物とは、古今東西あらゆる文化に敬意を払った上で、この土地の価値観や美意識を以てして融和し、変わり続けてきた衣服です。奈良時代の朝服、平安時代の束帯、安土桃山時代の肩衣袴、江戸時代の羽織袴、これら全て「着るもの = 着物」です。
とはいえ現在「着物」には和服の意味が色濃く反映されていますので、認識を改める意味を込めて、本義の着物「本着物」という名称を掲げて活動しています。
その過程において、洗練することと魅力を削ぎ落としてしまうことは紙一重だと感じた次第です。ただ着やすく、ただ使いやすく、ただ分かりやすいものには、どこか深みがありません。シンプルなものに特別変な感情は抱きませんが、何か大切なものもこぼれ落ちてしまっているように思います。だからこそ、斑や皺、色彩や装飾を加えることにしました。
霞羽織、霞袴、霞筒袖。
どれも魅力的な衣服です。
この時代の様式美を確立したいと思います。
販売サイト | KOHSUKE TODA |
デザイン | 戸田光祐 |
写真 | 株式会社桃屋美術 春日晃 |
ロケ地 | CASE GROUND |
協力 | 小松和久 |
2024AW | KOHSUKE TODA |
2024 | KOHSUKE TODA |
2023 | KOHSUKE TODA |
2019 | ほんきもの |
2017 | 和の衣 |