戸田光祐 TODA KOHSUKE|作品と製品|自己表現 Identity
戸田光祐 TODA KOHSUKE|作品と製品|自己表現 Identity

たまもの|2018
カトラリーをデザインした際にサインを考えたらどうだと言われ生まれた、戸田光祐を表す図案。カトラリーの製造販売元である燕振興工業の小柳社長に、刻印は名前ではなくサインにして欲しいとのご要望をいただいたことが思案のきっかけ。何を深く思案したかといえば、そもそも工業デザイナーにサインが必要か否かについて。

戸田光祐 TODA KOHSUKE|作品と製品|自己表現 Identity

工業デザイナーが製品にサインをするということは、つまりは工業製品に作家性が必要か否かという話しになる。工業製品と芸術作品とでは手掛けるにあたっての意識が全く異なるため、かなりの時間を割き考えた。

結果としては、あってもいいという結論になった。匿名性の高い工業デザインの業界においても有名なデザイナーは存在することや、作家性を前面に打ち出している方も少なからず存在する他、今後の社会を見据えるならば「私が手掛けた」と堂々とサインすることは明確な意志の表明になり、自分にとっても相手にとっても最適な環境が生まれやすいのではないかと。

こうして生まれた自らのサインは思案の複雑さとは裏腹に、円を三つ重ねた単純な形に至った。自分とはなにか。それを形にすることは自己の表現でありIdentityでもある訳で、形として表すにもそれなりに時間が掛かった。振り返ってみればいい機会だったとも思う。自己を見つめる過程で、最も自分らしいと感じたことは、常に新たな何かに取り組んでいるという生き方だった。ものづくりという一本の軸が通ってはいるが、その内容は日々変化し工業も工芸も美術もデータも手作りも問わない。この動的な、能動的な生き方を表現したいと考え、今にも動き出しそうなアシンメトリーな形に導かれていった。形状として円を使ったのは、やはり我々日本人にとっての魂の形は球体だと、改めて感じたから。
とても気に入っている。




制作
戸田光祐